前回の記事では、ツェルマットで過ごしたマッターホルンざんまいの1日半をお伝えしました。今回は、ヨーロッパ最高地点として知られるユングフラウヨッホ(Jungfraujoch)への道のりと、途中下車で立ち寄ったベルン(Bern)、そして最終目的地シャモニー(Chamonix)への玄関口となったジュネーブ(Geneva)までをまとめてご紹介します。
インターラーケンを経由し、ユングフラウヨッホへ
ツェルマットでの充実した1日半を終え、次に向かったのはベルナーオーバーラント地方。「Top of Europe(ヨーロッパの屋根)」とも呼ばれるユングフラウヨッホを目指し、朝一番の電車に乗り込みました。

車窓には緑豊かな牧草地と雄大な山並みが広がり、移動そのものが極上の観光になるのがスイス鉄道の魅力です。ただ、あまりに車窓や途中に立ち寄る街並みが美しく、写真を撮ることに夢中になっていたら、乗り換えのタイミングを逃すというヒヤリとする一幕もありました。景色に見とれてしまうのも、スイス鉄道旅ではよくある「あるある」なのかもしれません。
道中ではインターラーケン(Interlaken)にも立ち寄り、少しだけ街を散策。なかでも印象的だったのが、街を流れるアーレ川(Aare)の光景です。ここは、仕事終わりの地元の人たちが、防水バッグに荷物を入れて川に飛び込み、そのまま流れに身を任せて下っていくという、夏の風物詩が見られる場所だそうです。私自身は今回飛び込むことはできませんでしたが、次に訪れる機会があれば、ぜひ挑戦してみたいと思っています。もし同じように川流れに挑戦したい方は、貴重品を濡らさずに持ち運べる防水ドライバッグを一つ持っておくと安心です。

ここからさらに山側へと電車を乗り継ぎ、クライネシャイデック(Kleine Scheidegg)方面へと標高を上げていきます。この山あいを登っていく区間で、放牧されている牛が線路に近づきすぎてしまい、電車が一時停止するという何とものどかなハプニングがありました。慌てるでもなく淡々と対応する乗務員や乗客の様子に、これもまたスイスらしい光景だなと微笑ましく感じました。

Top of Europe、スフィンクス展望台からの絶景
登山鉄道を乗り継ぎ、標高3,454mのユングフラウヨッホに到着。高速エレベーターでスフィンクス展望台(Sphinx Observation Terrace)に上がると、目の前にはヨーロッパ最長・最大級を誇るアレッチ氷河(Aletsch Glacier)の大パノラマが広がっていました。雪を踏みしめながら眺める景色は、標高の高さゆえの息苦しさすら忘れさせてくれるほどの迫力です。

ツェルマットに比べるとアクセスがしやすいこともあり、ユングフラウヨッホは観光客の数がぐっと多く、展望スポットで写真を撮るために順番待ちの列ができているほどの賑わいでした。大自然を独り占めできたツェルマットとはまた違う、「みんなで楽しむ絶景」の空気感も、これはこれで旅の醍醐味だと感じました。
クライネシャイデックからのハイキングと、静かな下山
ユングフラウヨッホからの帰路は、登山鉄道でクライネシャイデック駅まで下り、そこから少しだけ登ってロープウェイ乗り場を目指す、プチハイキングを挟みました。歩いていくと湖が現れ、雄大な山々、行き交う鉄道、そして牛の首につけられたベルの音を聞きながら過ごす時間は、何にも代えがたいゆったりとした贅沢でした。

ロープウェイ乗り場に着いてからは、2020年に開通した新しいロープウェイ「アイガー・エクスプレス(Eiger Express)」を利用して一気に下山。こちらの便は乗客がほとんどおらず、まるで貸し切りのような静かな時間を過ごせました。ガラス張りのゴンドラから見下ろす緑の谷を独り占めできたのは、思いがけない幸運だったと思います。

途中下車のベルンで出会った、川と街の文化
ジュネーブへ向かう道中、スイスの首都ベルンに立ち寄りました。鉄道パスを活用すれば、こうした気ままな途中下車も気軽にできるのが、スイス鉄道旅の大きなメリットです。
ベルンはコンパクトながらも中世の面影を色濃く残す石畳の街並みが魅力で、街のシンボルである時計塔(ツィットグロッゲ/Zytglogge)を見上げたり、赤いバスが行き交う通りを歩いたりするだけで十分に旅情を味わえました。

ジュネーブでの1泊、シャモニーへの前泊地
ベルンでの街歩きを終え、この日の宿泊地であるジュネーブへ。UTMB(Ultra-Trail du Mont-Blanc)の舞台となるフランス・シャモニーへの玄関口として、1泊だけの滞在でした。
物価の高いスイスの中でも、ジュネーブの宿泊費はそれほど高くなく、「食事は高いけれど宿は意外と手頃」という印象を持ちました。夜になると、道によっては少し雰囲気に気をつけたほうがいい通りもありましたが、全体としては過度に警戒するほどの危険は感じませんでした。街中にはコインランドリーもあり、旅の終盤の洗濯にも困りませんでした。

まとめ:いよいよシャモニーへ
翌朝は川沿いを少し散策してから、バスでシャモニーへ移動。ツェルマットのマッターホルン、ユングフラウヨッホの氷河、そして途中下車で出会ったベルンとジュネーブの街並み……天気予報をきっかけに組み替えたスイス周遊は、当初の予定では出会えなかったはずの景色と経験の連続でした。
次回はいよいよ、UTMB・OCCレース本番の舞台となるシャモニーでの体験記をお届けします。お楽しみに。